
まずは会社概要について教えてください。
株式会社アルファシステムは、平成5年に有限会社として設立し、現在32期目、今期で33期目を迎えます。9月決算の会社です。
当社は創業当初から「医療ビジネス事業部」を中心に展開してきました。具体的には、電子カルテや医療画像システムなど、病院や薬局、クリニック向けのIT導入を支援しています。特に、大学病院のような大規模医療機関ではなく、200床程度の中小規模病院や診療所・調剤薬局を主なターゲットにして約1200件のクライアントがおります。
現在は、秋田・青森・仙台・新潟・水戸・首都圏(大宮に統合)の6拠点に事業所を構えており、拡大はすべてM&A(営業譲渡など)を通じて進めてきました。
医療ビジネス以外にも事業を展開されていますね?
はい。2020年からは「ヘルスケア事業」に注力しています。背景には、特に東北地方における人口減少と地域医療の空洞化があります。たとえば秋田県では、10年前に約800あった医療機関が、現在は650を下回る状況です。特にコロナ禍以降、開業医の減少が顕著で、医師の地域偏在も深刻化しています。
そうした課題の中で、健康寿命の延伸を目指すヘルスケア事業に舵を切りました。現在は、県内の約半数の市町村で「フレイル検診システム」を導入し、高齢者の心身の衰えを早期に発見・予防することで、要介護状態の予防につなげています。


フレイル検診以外の取り組みについても教えてください。
たとえば「遠隔医療(オンライン診療)」の分野では、総務省のIoTサービス創出支援事業に採択され、仙北市をフィールドに先進的なモデル事業を行ってきました。また、「医療MaaS(移動診療車)」の導入も進めています。
医療MaaSとは具体的にどのような仕組みですか?
高齢の医師が訪問診療に出向くのが難しい場合でも、医師はオンラインで診療を行い、看護師のみが現場に出向くというモデルです。これにより、高齢化や医師不足が深刻な地域でも、質の高い医療を届けることができます。仙北市から導入が始まり秋田大学附属病院や横手市などで導入が進み、地域医療の新たな形として注目されています。
さらに、医療MaaSでは、問診から電子カルテ、会計、処方箋発行、薬局との連携まで、すべてを車内で完結できる仕組みを整えています。これにより患者さんの利便性はもちろん、医師の働き方改革にもつながっています。
事業としての意義だけでなく、社会貢献の面も大きいですね。
はい。高齢化や過疎地域での交通弱者など、地域課題は非常に深刻です。私たちの取り組みは単に収益性だけでなく、社会的意義があると考えています。患者さんから「来てくれて助かった」という声をいただくこともあり、社員にとっても地域に役立つ実感がモチベーションにつながっています。これからの時代、事業活動と社会貢献活動は一緒でなければならないと思っております。個々の商品が良い悪いという前にその企業やブランドが社会にとってプラスかどうか判断されるのだと思います。
遠隔医療の他の事例もありますか?
医療MaaS以外にも、産婦人科の若手医師に退官したベテラン医師がオンラインで知識を提供し、乳児の心臓診断などを遠隔で支援する体制も整えています。
リカレント教育について
秋田大学の社会人向け講座に社員の方が参加されますね。
私自身、これまで「リカレント教育」という言葉にはあまり馴染みがありませんでした。しかし、社員に必要なスキルや資格は時代とともに変わります。今後特に重要になるのは、情報セキュリティやデータ分析、AIなどの分野だと考えています。
当社では、ITスキルに加えて統計やデータサイエンスの知識を必要とする業務が増えています。特に情報セキュリティは重要で、医療分野では患者さんの個人情報を扱う以上、IT化が進むほどリスクも大きくなります。電子カルテが攻撃される例もあるため、社員一人ひとりが基本的なセキュリティ知識を身につける必要があります。
そのため、社員の学び直しの機会としてリカレント教育に期待しており、今回の受講に際しても就業時間中に学習できるような環境整備を進めています。
受講する社員にはどのようなことを期待されていますか?
単にスキルを身につけるだけでなく、人間力やマネジメント力も高めてほしいと考えています。リカレント教育を通して他企業や世代の人々と交流し、幅広い視点を得てほしいです。業務に直結しない分野であっても、新しい知識や価値観を吸収することで、人としての幅が広がると思います。
必ずしもDXに関連した内容だけにこだわらないということですか?
そうですね。ジャンルにとらわれず、人間を磨くことが必要です。歴史など、自分が興味を持てる分野でもいいですし、教養を深めるような講座も歓迎です。
国や自治体、教育機関に期待することはありますか?
補助金の金額に比べて申請書類の量や手間が非常に大きいですね(笑)。もう少し簡素化して、使いやすくしてほしいです。
リカレント教育を検討している他の企業に向けて、一言あればお願いします。
これからの人材確保は中小企業では本当に厳しい時代となってまいります。
秋田大学のリカレント教育は今いる人材のスキルアップ、人間力アップに非常に有意義な講座です。ぜひ秋田県の企業の皆様にも積極的に参加して欲しいと思います。
企業情報
企業名:株式会社アルファシステム
