受講生プロフィール
熊谷 賢(左)
株式会社みずほライス代表取締役社長。2011年の設立以来、秋田県横手市を拠点に農業経営に取り組む。
会社ホームページ https://mizuho-akita.com/
佐藤 誠(右)
株式会社アキタネット代表取締役。1999年の創業以来、秋田市を拠点にICT分野を中心とした事業を展開。
会社ホームページ https://www.akitanet.co.jp/

――受講したきっかけを教えてください。
熊谷社長
「農業をやっていると、どうしても農業系の知り合いばかりが増えていくんです。でも、これからは農業の知識だけ集めても勝負にならない。いろんな業種の方とつながりを作りたい、自分の知識の枠を広げたいと思って参加しました」
佐藤社長
「正直に言うと、大学の方から声をかけていただいたのがきっかけです(笑)。でも、視野を広げたいという思いは強くありました」
――講座を受講してみた感想は?
熊谷社長
「基本からしっかり学び直せたことで、忘れていたことに気づくことが多かったですね。基本に立ち返って一つずつやっていくとビジネスは広がるんだなと実感しました。最終的に新しい事業を思いついて実行するきっかけになったので、とても良かったです」
佐藤社長
「率直に言うと、少し物足りなさも感じました。もっと実践的な事例、たとえばTSUTAYAが図書館の指定管理を請け負って事業転換している話や、USENが保険や飲食店向けサービスに進出している事例など、踏み込んだ内容が欲しかった。市場環境が大きく変化する中、企業には自社の強みを活かしながら柔軟に事業を再構築していく姿勢が求められている。成功事例を通じて『あなたもできる』という勇気を与える講座になるともっと良いと思います」
――講座後、学んだことを実践していますか?
熊谷社長
「経営デザインシートを中間管理職に共有して、『自分がやりたいことをこうやってまとめるんだよ』と説明しました。ただ、研修って2〜3年経ってから『あ、これ繋がった!』と気づくことが多いんですよね。即効性はないかもしれませんが、少しずつ効いてくると思います」
佐藤社長
「サノ・ファーマシーさんを企業訪問しましたが、AIをもっと活用しなければと強く思いました。うちの会社では今、相当な額をAI関連に投資していて、用途に応じて生成AIを使い分けています。AIを使えば、提案書作成もコーディングも、驚くほど速くできる時代になりました」

――異業種の方とのグループワークはいかがでしたか?
熊谷社長
「職層もバラバラで、みんないろんな視点があるんだなと面白く感じました。私は理念主導型の経営をしているんですが、『やっぱりお金儲からなきゃダメだよね』という視点もあって。職種や立場が違うことで、物事の捉え方もまったく異なることを知ることができました」
佐藤社長
「実はこの講座で熊谷さんと知り合って、すぐに協業が始まったんです。ちょうど米の販売で東京の方とつながりたいという話があって、熊谷さんを紹介したら、どんどん話が盛り上がって。今も一緒にやってます」
熊谷社長
「佐藤さんとは本当に気が合いました。異業種との出会いは農業だけやっていたら絶対になかったので、この講座のおかげですね」
――秋田にリカレント教育を根付かせるために必要なことは?
熊谷社長
「動きながら学ぶことが大事だと思います。勉強してからやろうとするから、みんな勉強が好きじゃない。しんどいですよ。やりながら勉強すれば、大変じゃない。今回の事業(注)も、思いついてから組み立てながら学んでいきました。60点を毎日繰り返しながら、少しずつ純度を上げていく。それが楽しいんです」
(注)熊谷社長は現在、空きハウスを活用したアクアポニックス事業を進めています
佐藤社長
「若手経営者やこれから起業する人たちに焦点を当てるべきだと思います。固定観念や従前のシガラミや価値観に囚われがちなベテラン経営者だけが集まっても、なかなか変化は生まれない。スタートアップ10年くらいの若い経営者が集まって、学び合う場があるといいですね」
熊谷社長
「それから、働きたくても働けない人たち――子育て中の女性やシニア、障害のある方など――潜在的な労働力を引き上げることも大事です。子どもを連れてきても働ける環境を作れば、もっと多くの人が活躍できる。リカレント教育は、そういう層にも響くものであってほしいですね」

――講座修了後、こんなフォローアップがあったらいいなというものは?
熊谷社長
「半年後くらいに、受講生が集まる機会があるといいですね。講座の最終日には『こういうことをやりたい』と宣言しても、会社に戻ると冷やされることもある。実際にやった人、やれなかった人が集まって、どういうところで詰まっているのか、ざっくばらんに話せる場があるといいと思います。愚痴を聞くだけでもいいんです」
佐藤社長
「実際に事業を実現できた経営者の発表会があると、みんな元気になると思います。『こういう企業がいるんだ』『自分もできるかも』と勇気をもらえる。OB会のような形で、成功事例を共有する場があるといいですね」
インタビューを終えて
「人に合わせて仕事を作る」――現場で見た新しい働き方
今回の取材先、みずほライスさんの事務所では子どもの声が響いていました。「連れてきてもいいんですか?」という問いに、熊谷社長は「もちろん」と即答。「事務所の一角には、みんなで作ったログハウスがあり、子供を遊ばせておくことができます。子どもがぐずったり体調を崩したときのために、エアコン完備の別室も用意されています」
「子どもがいるから働けない」――そんな理由で就職を諦めざるを得ない人、特に女性は少なくありません。熊谷社長は、そうした方々が安心して働ける環境を整えることで、人手不足を解消し、同時に仕事の質を高めようとしています。「働きやすさナンバーワン」を目指す同社の理念は、「人に合わせて仕事を作ればいい」という一言に集約されます。
リカレント教育も、こうした働き方を後押しする存在でありたいと、改めて感じた取材でした。
取材・文:秋田大学地方創生・研究推進課
お二人が受講した講座
「経営マネジメント講座」
https://www.akita-u.ac.jp/honbu/general/eventa/item_pro2_3.html